市民ネットワークを代表し、発議案第6号、第7号、第8号、第9号、第12号に賛成の立場から、発議案第5号には反対の立場から討論いたします。
まず発議案第6号 乳幼児医療費無料化を国が制度化し、財源保障を行うことを求める意見書について、発議案第7号 子どもの貧困と格差是正を求める意見書について、発議案第9号 消費税増税に反対する意見書について、発議案第12号 一人親家庭の生活支援を速やかに行うことを求める意見書について一括で行います。
国が2002年度予算から続けてきた社会保障費抑制策で2009年度までに総額8兆円が削られました。生活保護老齢加算、母子加算、失業手当などの大幅削減は、母子家庭の母親や父子家庭、老齢者、失業者、入院患者など抗議の声を挙げる余裕すらない人々にしわ寄せは及んでいます。医療、介護、福祉など社会的セーフティネット機能が著しく弱体化し、非正規労働の拡大は、生活保護基準以下で働く「働いても食べていけない」いわゆるワーキングプア層を作り出しています。「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2006」(骨太の方針2006)で毎年2200億円の社会保障費削減を2011年まで毎年行い、高齢化に伴って自動的に増える社会保障費の自然増を5年間で1兆1千億円圧縮するとしていましたが、麻生内閣は骨太の方針2009で事実上この方式を放棄する一方で、2011年度以降の消費税増税を可能にする税制抜本改革の道筋を示す「中期プログラム」の具体化を明記して、国民の一律負担を求めるシナリオを描いています。経済危機対策として定額給付金2兆円を含む2008年度補正予算4兆8千億円と2009年度補正予算14兆7千億円の大企業支援策であるバラマキ景気対策が行われ、その財源をも消費税増税に求めようとしています。毎日の暮らしに最低限必要なものは、所得の高い人も低い人も、それほどかわりません。低所得世帯ほど全収入にたいする消費支出の割合は増して負担が重くなり、消費税増税によりますます困窮世帯が増えることは目に見えています。よってこれらの意見書は採択すべきであり、賛成いたします。
発議案第8号農地法の「改正」に反対する意見書についてです。
6月17日参議院本会議で「所有から利用へ」をキャッチフレーズに改正農地法が可決、成立しました。農地法第1条の目的が「農地を耕作者みずから所有することが最も適当である」から「農地の効率的な利用を促進する」ことへと変更されました。耕作放棄地対策、食糧自給率を高めること、農業振興を図ることを目的として大企業の農地所有に道を開こうとするものです。農業に携わらない大企業や外資系企業を含む一般企業が農地を利用できるようになったことは戦後農政の大転換です。
小作地(貸地)の所有制限や標準小作料制度を廃止し、賃貸借の期間制限20年間を今後は50年間にするなど賃貸借に関する規制を緩め、競争力のある企業が参入しやすくするための条項も設けられました。大企業がその資本を投入し農業へ参入しても、利潤が上がらなければ撤退して、荒れ地だけがそこに残ることになる恐れもあり、まして大型機械の入らない中山間耕作地は、さらに取り残されたままとなることが予想されます。しかし、農村・農業の諸問題は、戦後農政の無策により農業が自由化の波にさらされ、農業で生活できなくなった人が農村から都市部へ流出し、産業として後回しにされてきたことが原因であり、農地を耕作者が所有してきたことが原因だったわけではありません。千葉県においても、農地に不適切残土を搬入する違反転用が頻発し、ずさんな経営方針しか持たない「農業法人」が、甘いことばで農地を残土処分場にしようとする動きもありました。今回の法改正により、違反転用に対する罰則が強化され参入の許可に市町村長が関与すること、周辺農業に支障が生じた場合農業委員会が是正を勧告するなどの要件が付加されたことは評価しつつも、農地の権利移動規制が緩やかになることで新たな問題が生じる不安もぬぐえません。国は本来、懸命に努力し豊かな農村を維持している農業者の努力に報いる価格補償や、農村に移り住むことをめざす新規営農者支援などの政策をこそ強化すべきであり、安易に外資系等の企業に農業を委ねることに繋がりかねない今回の農地法改正に、強く抗議し撤回を求めます。よってこの意見書は採択すべきであり、賛成いたします。
次に発議案第5号 介護保険制度における要介護認定をやめることを求める意見書についてです。
2000年4月からそれまでの措置制度ではなく保険としての介護保険が施行されました。創設のねらいと基本理念は、家族が担ってきた介護を社会全体で支えていくための制度として、また福祉と医療に分かれていた高齢者介護に関する制度を再編成し、利用者がサービスを自己決定、自己選択できるようにすることにありました。しかし、法律や計画の見直しにより、介護費用を抑制する仕組みが形作られ、当初の理念と利用者の現状はますます乖離しています。
本年4月に新項目、新判断基準でスタートしたばかりの新要介護認定基準は、始まる前から「介護度を低くし、介護給付費の抑制ありきの改定にすぎない」と批判されており、3月下旬、認定基準の内容を一部変更し、見切り発車のような形で始めたにもかかわらず、4月中旬になって厚労省は、要介護度を更新する人を対象に従来の判定を選択できる経過措置を講じました。期間については「2〜3カ月の検証を経て新基準を改定し、それまで経過措置を継続する」としていますが、新たに介護サービスを受け始める利用者については、新基準が適用され、更新する人との不公平感は否めず、問題山積みの現在の認定審査であり介護保険制度ではあります。
本意見書もそのような介護保険制度の問題点を指摘し、要介護認定制度を取り止めケアマネージャー等による介護計画主体のシステムを提唱していると思われます。しかし、ケアマネージャーによる介護計画を多人数で検証することは不可欠で、第三者機関で検証する必要性や、ケアマネージャーの独立性の担保、人材不足などの問題もあります。また、何よりも要介護認定制度を廃止すれば全ての問題が解決するとは考えられず、本意見書には賛同できません。いま求められていることは、利用者や介護従事者をはじめとする当事者の意見を吸い上げ、今後の費用負担や社会保障のあり方を含めてトータルな議論をすることです。制度発足時の理念である介護の社会化を実現するために抜本的見直しに取り組むべきと考えるものです。
以上で討論を終わります。
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