8月26日 第16回口頭弁論 証拠調べの報告


中村春子

千葉地裁での1回目の証人尋問は傍聴席も原告席もはたまた代理人の席さえも足りず、急きょ、椅子を運び入れるガタガタ騒々しい中で始まった。

嶋津暉之さん 長年の研究経験からの八ッ場ダム不要論

最初の原告側証人は「八ッ場ダムをストップさせる市民連絡会議」代表の嶋津暉之さん。彼はこの訴訟以前から、水問題、ダム問題の運動をリードしてくれた人である。山口弁護士の主尋問によって、利水面での不要性が理路整然と語られた。嶋津さんは大学院の研究生時代に得た専門知識、さらに東京都公害局、東京都環境科学研究所に勤める中で「水需要を小さくすればダムをこれ以上必要としない社会が来る」と確信し、工場の水節約技術を確立したが、国のダム建設は止まらなかった。この怒りを内に秘め、国や県の膨大な資料を基に、ダムを造らんがための水需要の実績に対し、明らかに過大な予測をする行政のダム計画の欺瞞性を明らかにした。これに対し、県側弁護士は一言の反対尋問もしなかった。(三つの県の弁護を掛け持ちでやっているが、どこもしていない。)

大野ひろみさん(千葉県議) 千葉県の説明と不当性

二番手の県議、大野ひろみさんは中丸弁護士の問いかけに、県議活動の中での一般質問、担当課へのヒアリング、現地調査で得た知識をもとに、はっきり、きちんと答えた。これにより、千葉県が自ら考えることなく国任せで八ッ場ダム事業に参画している無責任さ、いい加減さが白日のもとにさらけ出された。
(度々の打ち合わせによる両者のコンビネーションはとても良い。一回で終わるのは惜しい。)終わりに、堂本知事が日頃発言している生物多様性、逼迫した県財政や八ッ場ダム問題に対する認識について、法廷の場で知事本人から聞きたいと裁判長に訴えてくれたのも大変よかった。

高澤さん(千葉県河川整備課) 治水

三番手は敵性証人(原告側が呼び出す被告側の証人)の千葉県河川整備課室長の高澤さん。聞き手は千葉弁護団若手の及川弁護士で、メリハリのきいた尋問は胸のすく思いでなかなかエキサイティングであった。国交省はずっと「カスリーン台風並みの洪水がきたら、利根川流域は氾濫し、34兆円の被害が出る」とおどし、だから八ッ場ダムが必要だと言ってきた。利根川治水計画の中の八ッ場ダム建設はカスリーン台風被害が根拠になっていた筈だ。
しかし、ここで面白いことが起きた。高澤証人は「八ッ場ダム建設とカスリーン台風は関係ない」と言い出した。
ダムをつくる根拠となっている八斗島地点での洪水流量について、国会質問や各地裁での証言がころころ変わってきて、八ッ場ダムの必要性について国の言いわけも変ってきていたが、こんなにはっきり被告側がいったのは初めてだ。これは7月15日の水戸地裁で敵性証人として出廷した国土交通省関東地方整備局の河崎前河川部長の尋問で、利根川の基本高水流量(22,000t)の信頼性のないことが明らかになってしまったこと。そして、7月29日水戸地裁、7月30日東京地裁で原告側証人の河川工学者の大熊孝・新潟大学名誉教授の徹底した現地調査により八ッ場ダムを必要とする根拠となった洪水の推定値が過大であることが立証されてしまったこと。
全く立場の違う二人の証言により判明した事実の大きさが高澤証人の発言になったのだと思う。
でも、この高澤さんは私が傍聴した敵性証人の東京都職員、国交省前河川部長よりずっと誠実に答えているように見えた。
事業費倍増、工期延長といくつも立ち止まって考え直す機会があったにもかかわらず、千葉県が自ら何も検証してこなかったことを法廷でも明らかにしてくれたのだから。
応援に駆けつけてくださった広田・只野両弁護士、千葉の弁護団の息の合った尋問は被告弁護士の発言を間の抜けたものにしてしまった。
千葉地裁301号法廷の最初の証人尋問はエキサイトして面白かった。次回は9月16日、3人の証人が決まっている。
残る申請証人は堂本暁子知事だけ。裁判所は8月、9月の6名の証人調べを行なった上で採否を決めると言っている。予備日として事実上10月7日を確保している。



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