意 見 陳 述 書

2005年3月11日
千葉県佐倉市江原台2−5−29
中村 春子

千葉地方裁判所 御中 

 佐倉市に住む、八ッ場ダムをストップさせる千葉の会の中村です。はじめに、国の事業である八ッ場ダムが地域住民に与える影響を述べたいと思います。
 私が八ッ場ダムと自分たちの飲み水の関連に関心を持ったのは、佐倉市に転居した1980年代の初めでした。大勢の人たちの飲み水で、千葉県の水がめである印旛沼を眼下にひかえ、水を汚さない暮らしをしたいと、せっけん運動に関わったのがきっかけでした。

当時の佐倉市の水道水は、地下水が8割、河川水が2割でおいしい水であることを実感していました。しかし、佐倉市は千葉県環境保全条例の中の「地盤沈下の防止、及び地下水の保全をはかる」とした地下水採取規制地域になっているため、いずれ、代替水源である八ッ場ダムが完成すると、地下水と河川水の割合が逆転することを知りました。

 具体的には、現在使っている33本の井戸のうち、八ッ場ダムが完成するまでなら使ってよいとする暫定井戸28本近くを廃止しなければならないということです。そうなれば、高い河川水を買うための受水費が大幅に増え、市の水道事業の経営は厳しくなることは明らかですし、当然、水道料金にもはね返り、今の2倍になるであろうと言われています。

 佐倉市の水道事業体は安価で安全でおいしい地下水をなるべく長く使いたいと、井戸のメンテナンスを丁寧に行い、努力しています。佐倉市民としては、すでにその必要性を失っている八ッ場ダムのために、安全でおいしい地下水を放棄させられ、その上、多額の税金の投入、水道料金の高騰などを余儀なくさせられることは理不尽であり、到底納得できるものではありません。

 千葉県環境白書によれば、地盤沈下は全体的に沈静化しており、佐倉市においてはほぼおさまっています。専門家の科学的調査によれば、1〜2pの上下は誤差のうちであるとのことです。雨水の涵養をはかりながら、現在と同程度の地下水を継続的に飲み水として利用していくことが、地域の水循環を促し、「地下水の保全」につながることになります。

 遠くの人々の生活を壊し、自然の生態系を壊し、遠い利根川上流から水を奪うのではなく、足下にある地下水という優れた自己水源を、地域で大切に守っていくことが、今最も重要であり、次世代への責任でもあると思います。

 佐倉市議会では、住民の意思として、地下水を飲み水に優先的に使うことを明記すること、及び地下水の適正揚水量を算定し、水道水源としての地下水の揚水規制を見直すことを要望する「千葉県環境保全条例の見直しを求める意見書」を、2002年6月に、千葉県知事に出しています。

 その後も県内では、「八ッ場ダム事業の見直しを求める意見書」が、事業費改正前の2003年3月佐倉市議会から、6月習志野市議会、9月船橋市議会から、千葉県知事宛てに出されています。その後の2003年11月、国土交通省から出された八ッ場ダム建設計画の事業費2110億円から4600億円に増額の変更案に対して、県は八ッ場ダム、湯西川ダム基本計画変更に係る検討会を開きましたが、第三者も入れず、県庁内の職員のみでの会議であり、議事録も会議の公開もありませんでした。報告書は「『異議なし』との回答が妥当である」と、実に簡単に国の意向を認めています。千葉県の長期水需要予測では2000年時点の人口でさえ既に現実と30万人の乖離があります。巨額の費用を負担する必要性、その根拠を明確にし、県民に説明することが必要ですが、その責務を全く果たしていません。

 千葉県の財政は、2002年、2003年と2年続きの赤字決算であり、2004年度末の県債残高は2兆3874億円もあり、まさに危機的状況です。現在、住宅供給公社やアカデミアパークなど、過去の政策の誤りのツケとして、巨額の県民負担が発生することが明らかになっています。その上、パワーポイントの説明にもあるように、すでに治水・利水両面で目的が破綻している八ツ場ダム事業に、建設事業費と関連事業費、起債の利息を含めた合計額約757億円を支出するのは到底許されないことです。ましてや、計画から50年を経ているにもかかわらず、本体工事の目途も立っていない中、ダムサイトの地盤崩壊や湖水域の地滑りの危険性も指摘されており、国が言う2010年度完成は絶望的ですし、今のダム予算から言えば、完成は2020年頃ではないかと言われています。従って事業費の再度の増額もあり得ます。2010年を過ぎると、千葉県の人口は減少の一途をたどっていきます。当然、水の需要は減っていきます。その時、誰が責任を取るのでしょうか。

  受益者である私たち下流の住民の都合を縷々(るる)申しましたが、八ツ場ダム建設によって半世紀に及び人生を左右された水没する地区の方々、地元群馬の方々の苦悩に対して、軽々しく言える言葉を持てませんが、でも今、私たちができることは何でしょうか。ダム建設を止めて、現地再建に国も下流自治体も真剣に向き合うことではないでしょうか。今ならまだ間に合います。

 長い間自然保護運動や雨水利用を進める運動などに関わってきた大勢の市民が、八ッ場ダム建設の中止を求めて、今回の住民監査請求、住民訴訟に参加しています。このような大勢の市民の思いをしっかり受け止めていただきたく、強く要望して、私の陳述を終わります。  

戻る