多核種除去設備処理水の処分方針を慎重に定めることを求める意見書(案)

 東日本大震災に伴う、東京電力福島第一原子力発電所の大事故から9年余が経過した。使用済み核燃料の取り出し計画の先送りが発表されるなど、廃炉への展望が見通せない事はもとより、避難者の救済も含め未解決の問題が山積している中で、喫緊の課題の一つが「多核種除去設備(ALPS)」の処理水の取り扱いである。

 トリチウム等の放射性物質を含む処理水は、現在原発敷地内のタンクに保管されているが、2022年までには満杯になる見込みとなっている。その対処について、経済産業省内の小委員会は、検討してきた5つの処分方法のうち「水蒸気放出」と「海洋放出」が「現実的」であり、「海洋放出が確実に実施できる」と結論づけた「報告書」を2月2日に取りまとめたところである。

 これに対し、福島県漁業協同組合連合会は、「海洋放出には断固反対」「タンク等による厳重な陸上保管を求める」との趣旨の意見書を4月6日付で提出している。茨城漁連も同様の反対意志を表明、隣接する本県にも少なからぬ影響が懸念される中、本県の「令和3年度 国の施策に対する重点提案・要望(案)」において、新規項目として「多核種除去設備等の処理水の取り扱いについては(…)関係者の意見を丁寧に聞き、理解と納得が得られない中で、拙速に方針を決定しないこと」が盛り込まれている。

 政府は「トリチウム」について、「人や生物への濃縮は確認されていない」としているが、専門家からは、DNAや細胞レベルでの影響が指摘されており、安全性は確立していない。さらに、処理水中には、多種類の放射性物質が高濃度で残存しており、完全に除去はできないまま海洋放出されることになる。単なる「風評被害」のレベルを超えた問題なのである。

 福島漁連が主張する「陸上保管」は技術的に十分可能であり、しかも実績のあるものであるにもかかわらず、同小委員会で十分な検討を経たとは思えない。2018年に実施された公聴会で数多く出された、環境への放出に対する反対意見が十全に反映されたとも言いがたい。

 国においては、処理水について「関係者の理解なしにはいかなる処分を行わない」との福島漁連への回答を遵守し、拙速・杜撰な方針決定を行わないよう強く求めるものである。

  • 改めて福島県内のみならず広く「関係者」の意見を公開・公平に募ること。この「関係者」には、漁業、農業に携わる方々はもちろんのこと、観光業者、一般市民も含めること。
  • 「水蒸気放出」「海洋放出」の2択にこだわることなく、可能な限り環境中への放出を避ける案を検討し、社会的合意に基づいて的確な方針を決定すること。

以上地方自治法第99条により提出する。

内閣総理大臣
経済産業大臣 宛て

2020年  月  日
議会議長