8月24日、岸田首相は第2回GX(グリーン・トランスフォーメーション)実行会議で、「次世代革新炉の開発・建設」と「運転期間の延長」を挙げ、「これらを将来にわたる選択肢として強化するため、検討を加速してほしい」と指示した。
2021年改定の「第6次エネルギー基本計画」での、「原子力については安全を最優先し、再生可能エネルギーの拡大を図る中で、可能な限り原発依存度を低減する」という方針を、1年足らずで、原発推進へと大転換させるもので到底看過できない。
福島第一原発の大事故から11年を経て、いまだ「原子力緊急事態宣言」は解除されていない。事故の原因究明も進まず、避難者数も正確に把握されておらず、放射性物質による土壌汚染や健康被害などについても政府は本格的調査を行っていない。
また、汚染水の海洋放出など、国論を二分する課題が山積する中、国会でもない会議の場で、首相が一方的に原発の最大限の活用を指示するなど、原発被害者を含めた多くの国民を裏切る行為である。
特に本県にとって、再稼動促進リストに隣接県の日本原電東海第二原発が含まれていることは、県民の命と暮らしに直接関わる大問題である。
すでに稼働40年を大きく超える老朽原発であり被災原発でもある同原発は、30キロ圏に約94万人が暮らし、人口集中の首都圏に最も近い原子炉である。事故が起きた場合の住民の避難は至難の業であり、昨年の水戸地裁は「実効性ある避難計画や防災体制が整えられているというにはほど遠い状態で、人格権侵害の具体的危険がある」として、運転差止め判決を下した。
さらに、先日六ヶ所村再処理工場の26回目の完成延期が表明されたように、使用済み核燃料の処分の問題は解決の糸口すら見いだせていない。次世代革新炉も内容や実現可能性は曖昧なままである。電力需給やGX対策であるならば、電力需要調整や地域間融通等の仕組み作りを最優先すべきである。
東京地裁は7月、東京電力株主代表訴訟で東電旧経営陣に13兆円超の賠償を命じた。一旦原発事故が起これば「国土の広範な地域や国民全体にも甚大な被害を及ぼし、地域の社会的・経済的コミュニティの崩壊や喪失を生じ、ひいては我が国そのものの崩壊につながりかねない」とした判決文を首相は真摯に受け止めるべきである。
以上の理由から、岸田首相による原発の新増設・再稼働検討指示の白紙撤回を強く求める。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
令和4年9月28日佐倉市議会
内閣総理大臣
経済産業大臣
宛