複数の報道によると、政府は2023年度からの5年間の防衛費の総額を示す「中期防衛力整備計画」(以下「中期防」)の規模を現在(2019年制定)の27兆4700億円から5割あまりの増額を行い40兆円超とする方針を与党に伝え、調整に入ったとのことである。
すでに、本年5月の日米首脳会談において、岸田首相は一方的に防衛力の抜本的強化と、それに相当する防衛費の大幅増額を米側に約束している。全項目の金額を一切示さない前代未聞の23年度防衛費概算要求で予想されていた、防衛費の聖域的増額がここに露わになったといえる。
この金額の問題点の一つは、昨年末に次年度当初予算+前年度補正予算を「防衛力強化加速パッケージ」として防衛予算の過去最高額を強行し、同時に「中期防」の前倒し改定で本「パッケージ」をベースに、5年間で30兆円台にする旨の方針を提示してからわずか1年足らずで、さらに10兆円以上を増額させるその積算根拠の合理的説明が皆無であることである。
さらに、今回の「中期防」改定は、「国家安全保障戦略」「防衛大綱」の前倒し改定とセットであり、同3文書に明記される敵基地攻撃能力やスタンド・オフ・ミサイルの複数種保有など、これまでの日本の防衛原則を大きく逸脱する方向に沿って、防衛費が算定されつつあることである。
そして、仮に5年間で15兆円超の増額を実行するとして、そのための財源については十分な政府内の議論が行われておらず、安易に増税に走る可能性も大きい。
以上、今回示された「中期防」の大幅増額は、目的・内容と予算根拠、そして財源の見通しを著しく欠く「規模と金額ありき」の暴論であり、憲法の基本理念及び財政民主主義を蔑ろにする点からも、即刻白紙撤回することを強く求める。
地方自治法第99条に基づいて提出する
令和4年12月19日
内閣総理大臣
防衛大臣
外務大臣
財務大臣
衆参両議長 宛